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不動産会社ビッグとマーキュリア 資本提携の背景

今回のマーキュリアコラムは、20256月9日に発表した北海道に拠点を置く不動産大手ビッグ(札幌市)との資本提携についてです。創業から38年、北海道の不動産業界を牽引し、全国展開を行うビッグの村上晶彦社長とマーキュリアインベストメントの江島陽一マネージング・ディレクターに、資本提携の背景や今後の展望についてお話を伺いました。

 

「ビッグ」の創業と不動産業界変革への挑戦
株式会社ビッグホールディングス 代表取締役 村上晶彦

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▲ビッグロゴ

― ビッグはどんな思いを持って創業された会社なのでしょうか。

村上社長:創業当時(1987年)、不動産の世界には「業界」というものがなく、町の不動産屋さんがポツポツとあるという感じでした。大家さんも不動産屋さんに期待しておらず、自分で外に張り紙をしたり、電信柱に貼ったりして募集していました。物件を探す人は、東京の人なら「品川に住みたい」と思ったら、実際にそこまで行って電信柱の張り紙を見たり、不動産会社を訪ね歩いたりしていたのです。すべての情報を集めてデータ化し、皆が簡単に見られるようにすれば便利になるのではないかと考え、1995年に賃貸不動産検索システム「けんさくん®」※1を作りました。

 

― ビッグという名前の由来は?

村上社長:まず、誰が聞いてもわかりやすいこと。そして、三文字であること。それ以前に、イタリアンレストランを経営していたのですが、名前が長すぎて覚えてもらえませんでした。それで、不特定多数の人に覚えてもらうには三文字でわかりやすいことが絶対だと思いました。「ビッグ」というのは文字通り、会社を「大きくしたい」という思いもありましたね。

▲ビッグ店舗の外観

 

▲札幌市電のラッピング電車
(ビッグリリースより)

― ビッグの事業内容の強みはどのようなところですか?

村上社長:不動産業界で「本当のこと」を伝えたい、という思いがありました。創業当時の不動産屋の広告は、「8畳」と書いてあっても実際は「6畳」しかない、ということも普通でした。そうではなく、正しい情報を発信できるデータベースがあればいいなと考えました。
ここ15年くらいでやっと日本の不動産業界全体が正しい情報を早く発信していくべきという雰囲気になりましたが、当時は正しい情報を伝えることが結果としてビジネスになるだろうと。お客様のためにもなるし、当然当社のためにもなると考えました。
そのために、紙資料をベースにしたアナログ的なところから、データベースを作って瞬時に情報を提供するというデジタル化にいち早く着手しました。ビッグを創業する前に、マイクロネット(札幌市)というグループ会社でシステムの開発を手掛けており、エンジニアもいましたので、人材を活用して今のデータベースのような事業を作っていきました。



資本提携の背景


― マーキュリアインベストメントと資本提携を行うに至った背景は?

村上社長:ビッググループの中長期的な更なる成長を考えました。マーキュリアインベストメントのこれまでの不動産会社への支援実績、不動産領域への知見や幅広いネットワーク、支援先へのDX支援等の実績はビッググループのこの先の更なる成長に繋がると考えたからです。

 

― この先というのは、だいたい何年後くらいを想定されていますか?

村上社長:5年、10年です。AIは我々が考える以上に進歩しています。自動車から飛行機になるくらい変わると思います。

 

― マーキュリアインベストメントの印象はいかがでしたか?

村上社長:まずは政府系の日本政策投資銀行(DBJ)さんがマーキュリアホールディングスの大株主ということで安心感がありました。色々とやり取りしていく中でも誠実さが伝わってきて、そこがすごく良かったと思います。
会社にとっても、社員にとっても、信頼できるパートナーさんと一緒に会社を大きくしていきたい。その目的を叶えるためのお相手ということが一番重要でした。
DBJさんとは昔から取引があり、DBJが中小企業に融資したのはわずかで、グループ会社のマイクロネットがそのうちの1社でした。DBJは一般には融資していなかったのです。ダムを作ったり、道路を作ったりするようなところに投資する銀行でした。
マイクロネットには、先進的な事業を行う会社に対して支援するというコンセプトで融資していただきました。そこからずっとお付き合いがあり、ビッグにも融資していただきました。長くお付き合いいただいている銀行さんなので信頼感がありました。



今後の展望と不動産業界へのメッセージ


― マーキュリアインベストメントにはどのようなことを期待されていますか?

村上社長:たくさんありますが、色々なネットワークを使わせていただきたいですね。また、さまざまな会社を成長支援されているので、その知見やノウハウを活用して、更なる成長のサポートをいただきたいです。


― 今後さらなる発展に向けての展望はございますか?

村上社長:ここでは具体的にはまだお話しできませんが、今回のこの資本提携をきっかけに、次の発展にお互いに寄与できればいいなと思っています。



「不動産領域でもDXによる成長支援」
マーキュリアインベストメント マネージング・ディレクター 江島陽一


― マーキュリアの事業内容や強みについて改めて教えていただけますか。

江島:マーキュリアインベストメントは2005年にDBJを主な株主として設立されたファンド運用会社で、東証プライム上場のマーキュリアホールディングス<7347>のグループ中核会社でもあります。様々なステージにある企業様への出資を手掛けており、これまでにライフネット生命保険<7157>や化粧品のSONOKO(東京都中央区)、不動産領域ではNOT A HOTELCLCコーポレーションなどの支援をしてきました。運用資産残高は3,400億円(202412月時点)を超えており、不動産アセット分野ではグループ会社にて香港の上場REITを運営しています。国内外の幅広いネットワークと創業以来培ってきた企業経営への知見を生かし、出資先の成長支援に取り組んでいます。

 

― ビッグへの出資に至った背景はどんなところにありますでしょうか?

江島:北海道出身の社内メンバーが複数在籍しており、当地の金融機関等とも密な接点をもたせていただいたため、北海道内への企業様との提携等を含めて様々な可能性について検討をしておりました。その中でビッグ様との出会いがあり、話を深めてまいりました。

 

― ビッグについてはどのように認識されていましたか?

江島:賃貸不動産の仲介件数が全国トップ10に入ることに加え、不動産管理分野での豊富な実績から地域を代表するリーディングカンパニーと認識しておりましたが、IT x 不動産という視点で不動産に関わる多様なステークホルダーに向けて業界の課題解決や価値創造をし続けている会社であると、お話を重ねていく中で理解がより深まっていきました。日本の不動産業界は、米国などと比較してIT資本投入水準が低く、見方を変えるとDX化による革新余地が大きいものと実感しておりましたので、まさにビッグ様が推進している様々な施策を強力にご支援したいと考えております。

 

― 本件を進めるにあたって、重視したポイントはどこでしたか?

江島:初めての出会いから約1年間、協議を重ねる中で誠実かつ忌憚なくお互いに議論できたことが、私どもにとって本件の提携を進める上では重要でした。その過程の中で事業理解や現在進行中の新たなチャレンジ等、理解を深めさせていただき、また成長へのビジョンを共に醸成していくことができたものと考えています。

 

― 今後ビッグの成長に向け、どのようなビジョンを描いていますか?

江島:不動産業務の生産性向上に資するDXの活用等、業界に新たなソリューションを創出し暮らしを豊かにするというビジョンや、業界をリードする挑戦を続けるという基本方針は変わらないと考えています。ビッグ様が築かれてきた優れた事業基盤を、さらに将来に向けて豊かなものにしていきたいです。また、不動産業界で新たなチャレンジをする企業とも連携し、未来の「当たり前」を実現できるように事業を推進してまいります。

 

― 資本提携を検討されている経営者の方に向けて、メッセージはありますか?

江島:今後も成熟する日本において成長ポテンシャルを有する企業様と出会い、資金・ネットワーク・ノウハウ等を提供し、経営支援に深く関与することで、そうした企業様と共に一層強く成長していきたいと考えています。


※1 「けんさくん」は、株式会社ビッグの登録商標です。

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